財産は見られている!? 国による「監視網」強化の動き①
2017/06/20
資産家にとって最近「気になるコト」と言えば、マイナンバーをはじめとする財産の「監視網」の強化ではないだろうか。適正な納税を心がける納税者にとって何も怖い話ではないが、「財産がすべて見られている」となると、やはり気になるものだ。そこで、広がりを見せている国の「監視網」を整理してみる。
1.資産家を取り巻く状況
国税庁公表の「平成27年分の相続税の申告状況」によると、相続税の基礎控除引下げ等が実施された平成27年分に相続税の課税対象となった被相続人の人数は約10万3千人。改正前の26年分に比べて約4万7千人増加した。課税割合は8%(およそ13人に1人)と、これも前年分を3.6ポイント上回った。
当初、財務省は相続税の基礎控除引下げの効果について、課税割合が1.5倍の6%程度になると予想していたが、実際にはそれを大幅に超える水準となり、資産家に対するインパクトは大きいと言わざるを得ない。とりわけ、都心部在住の資産家にとってインパクトは強烈で、各地の国税局が算定した課税割合の都道府県別のデータ上位10位以内では、下記の通り、全国平均値を大幅に上回る。東京では、亡くなった人のうち7人に1人が相続税の対象になる時代がやってきたのだ。
当局では、相続税の大衆化に対応して適正・公平な課税の実現を担保するため、①すそ野の広がった相続税の課税対象者の保有する資産等の監視網を整備、限られた人材で効率的な運用を可能にするとともに、②懸案の国際的な租税回避に対する制度整備を充実させていくことが当面の課題になっている。
(表)平成27年 相続税の課税割合トップ20(都道府県別)
1位・・・東京(15・7%) 11位・・・広島(8.3%)
2位・・・愛知(13.8%) 12位・・・大阪(8.2%)
3位・・・神奈川(12.4%) 13位・・・香川(7.6%)
4位・・・埼玉(9.9%) 14位・・・群馬(7.6%
5位・・・静岡(9.7%) 15位・・・三重(7.0%)
6位・・・京都(9.1%) 16位・・・福井(6.9%)
7位・・・奈良(8.9%) 17位・・・富山(6.9%)
8位・・・岐阜(8.7%) 18位・・・岡山(6.8%)
9位・・・兵庫(8.4%) 19位・・・長野(6.7%)
10位・・千葉(8.3%) 20位・・・滋賀(6.6%
2.マイナンバー制度
今年の所得税の確定申告(平成28年分)などでマイナンバーの記載等が求められるようになった。また、不動産関連では、「不動産の使用料等の支払調書」「不動産等の譲受けの対価の支払調書」「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」については支払を受ける者ごとのマイナンバーを記載した調書を作成、税務署に提出することが必要になっている。
マイナンバーについては、固定資産税・都市計画税でも活用しようとの声が出ている。資産に関する情報の一元管理により事務負担軽減ができるのがその理由だ(「地方分権時代にふさわしい地方税制のあり方に関する調査研究会報告書」一般財団法人自治総合センター、平成28年3月)。もちろん、資産家の相続人にとっても、市町村の枠組みを超えて、ワンストップで相続する不動産が把握できるとの利点も力説されているが、ともあれ、国・市町村の枠を超え、限られた人材で効率的な体制を築く財産監視策のひとつとして注目されそうだ。(つづく)